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戦国自衛隊に突っ込みをいれてみた

 半村良の戦国自衛隊は昭和40年代に書かれたようだが実際当時の部隊と比較して何処の部隊がタイムスリップしたのか又人員的にどうか突っ込みを書いてみた。半村良は自衛隊に知り合いがいなかったのであろうか?かなり突っ込みがいのある内容となっている。なお補給所の「所」が「処」に変更された細部時期を私は知らないので原文以外は「処」と記載している。

(カギ括弧内は「原文」です)
「陸幕第四部の松戸需品補給所と土浦武器補給所からやってきた需品科および武器科隊員で・・」「第一師団の輸送隊や第十二師団の補給隊と協力し・・・野戦補給所を設営中であった。」
 陸上自衛隊需品補給処(松戸駐屯地)であり陸幕とは関係ない、武器補給処(霞ヶ浦駐屯地)(土浦駐屯地は武器学校である)

 小説中での演習規模は全国規模で舞台となるところは東部方面隊であり補給品もその規模となる。

「・・東部方面隊の直轄部隊である地区補給所の補給隊と、相馬原にある十二師団司令部の輸送隊の一部であった。そして次に陸幕第四部の需品科部隊・・」
 野外補給ということで需品とは食料・燃料、とくれば次は弾薬と思われるので「地区補給所の補給隊」ではなく武器補給処吉井弾薬支処(吉井分屯地)か武器補給処富士弾薬出張所(富士駐屯地)、又はこれらの混成と思われ武器補給処は長官直轄であり方面隊は関係ない。昭和50年代武器学校武器教導隊弾薬小隊(土浦駐屯地)が弾薬補給に加わり弾薬中隊を編成し弾薬の野外補給をする構想があった。司令部の輸送隊とは師団の輸送隊と思われる。

「そのあと警備のために十二師団の普通科隊員の十名が60式装甲車にのってやって来た。 予定通りの物資が、予定時間内に見事に集積されたのはい・・・・」
 12師団の普通科とは第2・第13・第30普通科連隊のどれかと思ったが64ATMが登場するので第 12対戦車隊(新町)と考えられる。
食料・燃料そして弾薬は同じ場所には集積しない、特に弾薬は別である。

 

 ここで情報、映画の戦国自衛隊には原作には出てこない61式戦車が登場する。その昔昔吉井弾薬支処には戦車が配置されていた。戦闘用ではなく排土板を付けたもので、年に1~2度降る雪のために除雪用として配備されていた?か、もしかしたら試験室用の試験機材としてだったかもしれない。

「ドラム缶が消え、弾薬が消え、火薬が消え、食料が消え、そして仲間達が消えた。」
 方面レベルの弾薬となると相当に広範囲である。弾薬と火薬を分けているが自衛隊が装備する弾薬とは火取法上の火工品であり純粋な火薬及び爆薬は当時だとC-3爆破薬(現在はC-4爆破薬)以外存在しない。後に64式対戦車誘導弾が出てくるがこれは機体部のみの梱包が大きく弾頭とロケットモータも別梱包でよけいに場所をとる。弾薬は弾種毎に堆積地域を分けるため小説のように狭い範囲でタイムスリップすると使えない弾薬ばかり例えばタイムスリップしなかった105mm榴弾砲用弾薬とか155mm榴弾砲用の発射装薬だけだったりする。

「二十五、六人の男たちの階級章をたしかめるように眺めた伊庭三尉は、自分より上級の者がいないのを知ると・・・」
 弾薬補給だけで二十五、六人となり偶然各補給地の入り口が近くにあり、そこを中心に展開してそこを中心にタイムスリップしたとしたら入り口付近には各補給事務所を開設しただろうから縦割組織の各補給幹部がいただろう、弾薬補給事務所なら補給幹部の他に3佐も出てくるだろう。

「隊のトラックは全部で十七両あった。」
 いすゞのボンネットタイプで輸送隊ということで6t積としましょうか
春日山城戦闘で64式対戦車誘導弾を1発、小田原城戦闘で(約)20発使っているが
箱が大きいため一両当たり多分機体部のみで8発しか乗らないと思う、その隙間に弾頭部とロケットモータ部を積載出来たとして64ATMのみで3両も使ってしまう。それと64ATMの発射機が何に搭載されてどこから持ってきたか不明になってくる。小説に73式小型トラックは登場しないので60式装甲車に搭載されていたと思う。しかし発射準備及び発車を武器科隊員にさせていることから伊庭らは対戦車隊ではないと考え地上撃ちとしたなら発射機は補給所にはなく交換部品として野外整備所に保管されているはず。

「・・・慌てて装甲車にとびつき、もぐりこんだ。砲塔を回転し、・・・・轟音がとどろいた。」
 装甲車としているが、砲塔?もしかすると60式自走無反動砲と60式装甲車が半村良の頭の中で混ざってしまったのではないかと思う。

「加納一士ら元陸幕四部土浦武器補給所所属していた武器科隊員四名は、そのはるか左後方でMATの発射準備に余念が無かった・・・・」
 武器補給所は部品の倉庫と整備場ばかりで武器科隊員は整備はできるが、小銃以外の射撃をしたことがない。

「多数の鍛冶を集めこの時代に産している硝煙を用いる砲を作っている。加納一士ら四名の武器科隊員の基礎知識が役だちはじめていたのである。」
 武器科隊員だから出来るということはない、武器科の火器専門でも陸士では構造は知っていても製造方法や機械材料知識はない、武器科の弾薬専門でも火薬類の製造方法の教育を一般陸士にはしない。そもそも各武器科の基礎知識とは整備と補給が殆どで生産力はない
私が突っ込めるのはここまで。

 私は、この小説で半村良は「自衛隊に歴史を変える力は無い」ということを描いているように思えた。タイムスリップ物としてはやはり消化不良である。だからこそその後続編がマンガやドラマ、映画になったのだろうと思う。

 異世界と自衛隊の小説としてはやはり、「GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」が一番よく出来ていると思うし、タイムスリップした先も異世界である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 番外編

 よく出来た「ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」だが二つだけ突っ込みを、それはゲート2.炎龍編(下)に出てくるもので
「・・すると白い塊は、青白い炎放って静かに燃え始めた・・・・・・こねればこねるほどよく爆発し、・・・・・伊丹の手はたちまち薄黄色に汚れていった。」
 ここの部分はプラスチック爆薬の説明だが「白い塊」なのでC-4爆破薬とおもいきやその後の説明がC-3爆破薬の説明になっている。小説が書かれた時期だとすでにC-4に変わっていたはず。C-3は黄色い餡子のような見た目とマジックインキのような強烈な臭いがする。使用に当たっては小説の説明通り こねる すると手が黄色くなる。ただし毒性が強いのでビニール袋の中に入れてこねる事を推奨している。C-4の場合は映画のようにそのまま使用出来る。教本のC-4使用方法にはたしかに「C-3と同じ」と書かれているがこれは完全に施設学校?だったか、の手抜きであり日本工機に問い合わせれば確認出来た事項である。

 

「こうした爆薬を用いる技術は、通常は施設科に所属しないと学ばないが・・・」
 武器科の中の弾薬もかならず基本爆破を取得します。目的は不発弾の爆破処理です。

以上で突っ込み終わります。

 作者柳内たくみ氏はC-3を知っている、もしかして元施設科の幹部?

戦国自衛隊.JPG
ゲート自衛隊彼の地にて、斯く戦えり
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